ガラクタ♂♀狂想曲
ガチャリとドアを開ければ、慌てて出たせいもあって散らかったまま。
「まずは暖房と——、」
部屋の中が乾燥しているから、お湯も沸かして。
「おかゆと」
コンロへ目をやれば冷えて不味そうに固まった白いもの。これも作り直さないと。
「——そんでコーキさん、なんだって?」
リビングのほうから、デンちゃんの声が聞こえた。
「んー…、なんかよくわからなかったんだけど、なんだったんだろう」
「ショコちゃん」
「うわっ、びっくり」
「ボーっとしない。おかゆ作ってもらうし、洗いものは俺がする」
「ダメ。いいからあっちで大人しく横になってて。病人なんだから——って。あ、でもデンちゃん」
「ん、なに手伝う?」
「そうじゃなくてさ、オーナーの車の中で流れていた曲のタイトル知ってる?」
「はあ? なに急に」
「さっきオーナーに聞かれたから」
「は?」
「知ってる?」
「あれはコーキさんのお気に入りで、モーツァルトのジュピターだけど、なんでまた子犬のワルツも知らないショコちゃんにそんなこと」
「——うるさいな」
だけどジュピター。ゼウスの英語名だっけ。
「ジュピターって、ゼウスのことだよね?」
「そうそう」
「ゼウスの曲?」
「ビンゴ」
なるほど。だからデンちゃんはすぐにゼウスのことが頭に浮かんだのかもしれない。
だけどモーツァルトって。それならなおさらそんな曲、私なんかに聞かれても知っているわけがない。
「それって、有名な曲なの?」
なんとなく聞いたことがあるような、ないような感覚は繰り返し流れていたのもあって聞きなれてしまったせいだと思っているのだけれど。
「んー、結構」
「そっか」
なにか意味があるのだろうか。
それから私はおかゆを作り直し、それを全部食べ終わったデンちゃん。
いまはベッドで横になっている。布団に包まれ本を読みながらまどろんでいた。
さっきから何度も欠伸をしているけれど寝付けない様子。