ガラクタ♂♀狂想曲
「——ごめんデンちゃん。もう大丈夫」
たとえ復活したように見えても、いまは私なんかと比べようがないほどデンちゃんのほうが辛いはずなのに。なんか思わず…。
そしてデンちゃんの胸から顔を上げた。すると息が掛かりそうなほどすぐ近くに私を覗きこんでくる。
「まだ寝れそうにない?」
「——モーツァルトのジュピターも、本当は彼が名づけたタイトルじゃないって言われてる。さっきショコちゃんが聴いていたあれは、ホルストのジュピターで」
デンちゃんも聴いていたんだ。
「あれのほうがモーツァルトよりは有名かな。CMとかでも流れていたし」
そう言いながら、布団を開けるデンちゃん。
「まあ、中へどうぞ」
「——いいよ、ここで」
「何もしないから。あと俺の風邪がうつるからイヤっていう理由は、傷つきそうだから却下ね」
「…なにそれ」
思わず吹き出してしまう。
「ほら早くー」
私があの曲を聞いて自分と重ね、さらにデンちゃんのことを思うオーナーを思い出したように、デンちゃんも同じように自分と重ね、そして瑠美を思ったのだろうか。だけどそんなこと聞けない。
「これだけは言える」
両手で私の頬を包み込むデンちゃん。その瞳が真っすぐだ。
「ショコちゃんがあれで、泣くことじゃない」
何も言葉が出なかった。
「コーキさんには、俺だってちゃんと感謝してる。本当に心から」
「……」
「尊敬もしてる」
それは前にも聞いたから知っているけれど、どうしたの急に。
「——デンちゃん」
「だからショコちゃんが泣くことじゃない」
まさかと思うけれど、デンちゃんはオーナーの気持ちをすでに知っているのだろうか。
だけどそんなことはない、はず。