ガラクタ♂♀狂想曲
「ショコちゃん、あのさ」
すると私の目からずっと視線を逸らさなかったデンちゃんが、そう言って少し瞳を伏せる。
なんだか胸騒ぎがした。
「ショコちゃんには、もっと感謝してるから」
「え……?」
「こんな俺を呆れず、いつも黙って見守ってくれて」
なにを言い出すの。なにを言うつもり?
「デンちゃん」
少し表情を歪め言葉に詰まったデンちゃんを急かした。
「ねえデンちゃん」
私のことをボロボロになっても立ち向かって守ると言った年下のデンちゃんは、頑丈に見えても脆くて。
ときどき驚くほどたくさん情けない姿も見せてくるのに、だけどいざとなったらいつも期待以上のことで返してくれるデンちゃん。
「俺に時間をくれてありがとう」
「…どういう、こと」
ひんやりと冷たいのかと思えば、寒さを凌ぐ壁となって心までポカポカと暖めてくれる。
そんなデンちゃんをたとえる言葉があるとするならばガラス。
「本当にありがとう」
「やめて」
「こっち出て来てから、なんかいいことなんてなくてさ。あ、向こうでもいい思い出なんて、なかったわけだけど」
そして息を吐き出したデンちゃん。
「だけどそれも、いい思い出かな。おかげでショコちゃんと会えたし、それにコーキさんとも」
「いま思いついた?」
いつもみたいに、サラッと。そう言ってほしい。