ガラクタ♂♀狂想曲

「……お願い、行かないで」

「泣かないで。泣くショコちゃんは、嫌い。見たくない」


だけど涙は全て拭き取ってくれるデンちゃん。


「——泣かせないでよ…」

「楽しかった」

「デンちゃん!」

「いま俺が自信もって約束できることと言えば、ショコちゃんが言ってくれたことを忘れないってことだけなんだ」

「……そんなのイヤ」

「俺を変えてくれたのは、ショコちゃん」

「そんなの知らない。また会うつもりもないのなら、私にはそんな言葉いらないの」


わかってよ、デンちゃん。


「…ショコちゃん」


それならハッキリと「さよなら」って言ってくれたほうがいい。


「だってショコちゃんを、これ以上泣かしたくない」

「だったら行かないで」


黙り込んだデンちゃん。ぎゅっと私を抱きしめる。


「お願いだよデンちゃん」


それからしばらく静かな時を刻んだ。それは確かに感じるデンちゃんの温もりと匂いだけが、ただ愛しい時間。

だけど、


「——元気でねショコちゃん。楽しかった。ありがとう」













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