ガラクタ♂♀狂想曲
「あはは」
すると彼女の明るい笑い声が聞こえた。その隣には光輝さんの姿。
「ツイてねえ」
声を掛けるつもりなどあるわけがない。
だけど、いつか再会することがある運命ならば、それが今日じゃないことを祈る。
「——大人しくしとこ」
あ。
「やっぱり愁?」
「あー…、ええっと」
「愁だろ?」
驚いて咄嗟に言葉が出なかった。
「お前、ひとり? てか、なにその寒そうな頭」
「——どうも」
日本を発つとき髪をバッサリ切った僕のことを見つけたのは八木さん。店は違うけれど光輝さんの同期で元ホスト。現在は幹部に回っているはずだ。
だけど顔見知りに会うのは不味い。
というのも、なにも言わずホストを辞めたから。この業界では「飛ぶ」と言われている行為。
「てか、お前飛んだんだろ? なんでこんなとこに? 未収でも返しにきたのか?」
「あー…っとそれは——、いろいろ、まあハイ」
「何してるんだ、ひとりで」
「——八木さんこそ」
「あいにく俺はひとりじゃない。なんといま探偵ごっこ中だからな」
「なんすか、それ」
「半端ないからねえ、近頃のJKはホント」
八木さんの隣で僕を見上げる視線に気づく。コートの中が明らかに制服の女の子だ。