ガラクタ♂♀狂想曲
はじまりは突然だった私たちだけれど、終わりはそれよりもっと突然で。
だけど私たち、つきあっていたことになるのだろうか。デンちゃんは彼氏の人数に含まれる?
「——ああ…、ほんと緊張する」
「大丈夫だって」
「だって私、一般人だし。お華とか着付けとか、それにピアノも弾けないし、あと——」
「今日は食事するだけなんだから」
「だけど」
すると私の肩を抱き寄せたオーナー…、もとい。
「綺麗だよ」
「……いまそんなの聞いてない」
「だけど本当に綺麗。その服にして正解」
いま私と桐生さんは、結婚を前提におつきあいという形をとっている。それは、女を愛せない桐生さんの体裁を守る…、見合いを断る口実ではあったけれど、それなりに上手くいっていた。
「もう」
「顔赤くなってる」
「……」
「さ、行こう」
そう言った桐生さんは私の肩をポンポンと叩き、車のキーを手に絡め取る。
「——あ、待って」
「なに?」
「デンちゃんは今日のこと、知ってるの?」
これはあとから聞いた話になるけれど、私の部屋からデンちゃんの荷物を運び出す作業は桐生さんが手伝ったそうだ。
「気になる?」
「——べつに」
ほとんどと言っていいほど、デンちゃんのことは口にしなくなった桐生さん。
だけど連絡は取り合っているのだろうと思う。
「あいつは元気にやってるよ」
そっか。
「行こう」