ガラクタ♂♀狂想曲
二か月ほどはアコーディオンを担ぎ、パフォーマーとして小銭を稼ぎつつ街で暮らしていた。フェイスアートとかしてさ。なかなか人気があったんだよね。
つまらなかったり飽きると、そっぽ向いてしまう子どもの心だってギュッウウウッと掴めたし。
それから、かあさんのコネを拝借してみた。最初はそんなのダメだズルい、甘えていると思ったんだけれど、あそこのお国柄が大らかで。悪くいえばテキトーなんだけど。
テキトーなのに、なんのコネクションもないと見向きもしてくれないから、素直にお願いして。
ちょうど光輝さんから電話が掛かってきたころ、ピアノが楽しくなってきたころだった。
「そういえばコウちゃんと最近話してないな」
「ふうん」
「元気かな」
「さあ」
知らないし。
当初4カ月で帰国する予定だったけれど、それを過ぎていたから連絡をくれたのか、そうでないかは何も話さなかったから、わからない。
あれから光輝さんから連絡がくることもなかったし、僕からも掛けることはしなかった。
「あ、でも一度、見かけたな。隼人くんの彼女と一緒だったよ。あのひとも一緒のときだったから挨拶したなあ。そういえば」
「ふうん」
「仲よさそうだったよ?」
「それはそれは」
「楽しそうだった」
「わかったって」
かあさんに渡すものを実家に取りに戻ったとき一時帰国して。ふたりが楽しそうに会話していたのを偶然目にしたから知っている。
声は掛けられなかった。そのとき、なにしろまだ発ってから一カ月そこらしか経っていない、ただのハゲだったし。
ふたりを偶然見かけたことで、なんだか再会の運を使い果たしてしまった気分になっただけ。でもって僕のいないところで笑うショコちゃんを見れて、これでよかったんだと思えた。僕の選択に間違いはなかったんだって。
「そっか。隼人くんの彼女、コウちゃんに取られちゃったんだね」
「はいはい」
「だってわたし、なにも知らないから」
「はいはいはいもー。手元に集中してくださいねえ。手切るよー」
「さっきからゴロゴロしてるけどさ」
「考えごとしてんの」
「会いにいかないのは、それが原因?」
「———ちがう」
ほんとさ。もうさ。
このひと、僕のライフを削ること、わりと普通に口にするよね。デンちゃん参っちゃう。