ガラクタ♂♀狂想曲
side 隼人
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僕がぶっ倒れた、あの日。
僕が飛ぶことを決意した、あの日。
救急車のお世話にもなった、あの日。
熱で頭がふわふわしている僕に対し、光輝さんは3つだけ頼みをきいてやるといった。いや、3.5だっけな。
僕との想い出を、ショコちゃんから消してほしいという頼みは、おまけの0.5。あのとき思いついた言葉。離れて辛いのは、胸が痛いのは、僕だけでいいと思ったから。
綺麗さっぱり、なくなってしまえばいいと本気で思った。
ショコちゃんと僕が過ごした日々なんて、それから重ねた月日よりもうんと短いのだし。
だけどほんと短い。正味のところ2カ月にも満たないんじゃないかな。
はじめてショコちゃんを見かけたのは夏ぐらい。まだだいぶ暑かった。歌舞伎町のコンビニを出てすぐだったかな。
男と一緒に歩いていたんだけれど、同伴にしては男のほうが少し放漫な態度だったからキャバ嬢に見えなくて。こんなところでなにしてんのかな、なんて。なんか不思議に思って眺めていた。
それから何度も見かけたから、やっぱりキャバ嬢なんだなあ、と。つまんなさそうに歩いてるなあ。最初に見たときは幸せそうに笑っていたのになあ。なんでキャバ嬢やってるのかなあ。なんて考えていた。
そんな日が数日続き、姿を見かけない日が増えて。きょうはいるかな?なんて、気がついたら探していた。
そんなある日、どこかスッキリした顔で歩くショコちゃんを見かけ慌てたよね。こりゃキャバ辞めるんだろうなと思って、追いかけたよね。
で、勇気を振り絞って声を掛けてみたのに、すごい迷惑そうな顔で僕を見たんだ。ショックで一瞬言葉が出なかったよ。ショコちゃんたらひどい。逆ナンからの新規を取るのが得意だった僕が、珍しく声をかけたのにさ。
呼び止めたはいいけれど。
なにを話せばいいのかわからなくて。
だけどとにかく名刺だけは受け取ってもらいたくて。
そんな僕には構わず、すたすた歩いていくショコちゃんを追っかけ、無理矢理に近い形で名刺を握らせた。すごいよね。これがキッカケだもん。