ガラクタ♂♀狂想曲
side 祥子
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デンちゃん。
あの、デンちゃん。デンちゃんが、
演奏が終わり挨拶を済ませたデンちゃんが、こちらを向いて深々と頭を下げている。その姿があまりにも絵になりすぎていて、思わず俯いてしまった。
「ほら祥子。最後まで、ちゃんと見なきゃ」
桐生さんの声に顔を上げる。するとそれとほぼ同時にゆっくりと顔を上げたデンちゃんが、こちらを向いてふっと微笑んだ、かと思えば——
「……え」
この場の雰囲気をぶち壊すかのように、口を横へニッと結んでからピース。思わずポカンと口を開けてしまった。
「痺れますね」
「……桐生さん」
「たまらないです。やってくれますよ、本当に」
デンちゃんが、帰ってきた。
「さーてと。ワインにするか、それともビール?」
「——え?」
「とりあえず乾杯したいから、今日は俺につきあって」
そして思い出したかのように、テーブルへ残された食事に手をつけた私たち。
「乾杯」
カチンと小気味よくワイングラスを合わせてくる。指輪と同じ色をした赤ワイン。
「そのガーネットは、遠く離れても自分をずっと想っててほしいという意味もある石でさ」
「……そうなの?」
「本当は出来上がったら処分してほしいと頼まれていたけれど、俺に頼んだのがそもそもの間違いだ。なんか俺らふたりともが、してやられたって感じ」
そして桐生さんは呼びつけたスタッフへ自分のことを告げ、デンちゃんをここへ連れて来るように伝えた。