ガラクタ♂♀狂想曲
「———いいの?」
「これって職権乱用? だけどたまには、こういうのも悪くない」
そう言ってグラスを傾ける桐生さん。私はぐるりと店内を見渡した。
「隼人がどんなツラ下げてここへやってくるか、見ものだ」
「だけど来るかな?」
ピースしたあとは、振り向かずここを出て行ったデンちゃんだ。
「祥子は来ないと思う?」
「わからない」
「ちなみに俺、ここのオーナですけど」
「あはは」
思わず笑ってしまった。
そして私もグラスを傾け、喉を潤す程度を口に含む。
「——あ」
すると呟くように短くそう言った桐生さんの視線が、すっと上がる。
なに。
慌てて口の中のものを喉へ押し込む。ごくりと喉が鳴ってしまった。
「お食事中、失礼いたします」
あ。デンちゃんの声だ。私の後ろ、頭の上からデンちゃんの声がする。
「——おい隼人」
「ご無沙汰しておりました」
「お前、カッコよすぎだろ」
「それは違います。だって俺はもともとがカッコいいんです。コーキさん、知らなかったんですか」
「知ってるよ、はげ。早く座れ」
なに。
なによ。
目の前に座っている桐生さんへ目をやれば、見たことないほど楽しそうな顔をして私の後ろへ視線を向けている。
「……ショコちゃん」
するとデンちゃん。私の隣へ腰を下ろし、顔を覗きこんできた。
「馬鹿デン」
だけど私はそう口にするのが精一杯だ。