ガラクタ♂♀狂想曲
イロモノ(おまけ)
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SIDE 祥子
いつもと同じ朝。
だけど、違う。
「デンちゃん」
一年半前、私の前から忽然と姿を消したデンちゃんが帰ってきてから3週間ほど経った。だけど、まだなんか信じられない。
優雅にピアノを弾く姿は、まるでおとぎ話から飛び出したんじゃないだろうかと思えるほど、キラキラ光を纏っていたのに——。
「よだれ出てますよー」
寝ていると、まだ子どもみたい。よっぽど疲れていたのかな。
「——口も開いてますねえ」
キリッとした表情のときでも少し口角が上がるデンちゃんの薄い唇は、横に結べば真っ直ぐ。拗ねると梅干しみたいになるし。
だけどいま、ぽわんとだらしなく開いていた。
私がほんの少し動くたび、もしかして起こしてしまったんじゃないかと思って寝れなかったのに、こんなふうに気持ち良さそうに寝息を立てられたら——……まあ、いいか。
「どんな夢見てますかー?」
ずっと忙しくしていたから、もう少し寝かせてあげたい気持ちはある。だけど驚いたことに瑠美が妊娠。しかも産まれたそうだ。
なんとか時間が取れたデンちゃんは、今日はじめて瑠美の赤ちゃんに会うことになっている。
「デンちゃーん」