ガラクタ♂♀狂想曲
「えー…、ちょっとデンちゃーん?」
「だってなんか、ココ寒いから」
上がっていた腕がぽすんと力なく自分の胸に落ちたデンちゃん。ラッコみたいな姿だ。
「なにそれ」
「———てか、なんで俺から離れてんの?」
「デンちゃんが起きないからでしょ」
「もう起きたもんね」
「まだ目瞑ってるじゃん」
「起きてますー、だ」
そういったデンちゃん腕が、いまはじめて意識を持ったかのようにぐいんと伸びてきた。
瞳はまだ閉じたままなのに、私を捉え胸に抱え込んでいく。
懐かしい香り。シャンプーやボディーソープではない、デンちゃんの匂い。耳元に顔を埋め、それを堪能していたい衝動にも駆られてしまう。まるで頭の隅っこが甘い密にでもなってしまったような。
だけどそんな淫らな思いは、ぐいぐい抑え込む。そろそろ本当に起きてもらわないと。
「——ねえ」
「ん」
そういえば以前のデンちゃんはひとりで寝るとき膝を抱え込むように丸くなっていたのに今朝はラッコみたいになっていた。どっちも同じデンちゃんなのに不思議。
「四の五の言わないで、さっさと起きて」
「普通シのゴとか言う? なんかショコちゃん、年上だけにやっぱりわりと古風だね」
「——ラッコのくせに生意気」
「イタタタタタタ」
せっかく人があれこれ物思いにふけっていたのに。
早く起きろといわんばかりにポスポスと体を叩くと、本気で叩いていないのに大袈裟に痛がるデンちゃん。睫毛が動いたと思ったら、すっと目が開いた。
だけど思いのほか、私のパンチが痛かったのかもしれない。まっすぐと私の目を見ている。
「愛してる」
わ。
びっくりした。