ガラクタ♂♀狂想曲
「……も、もう」
まだぼんやりとしていた細胞が、一気に目覚めてしまった気分。
聞きなれない言葉に真意を見つけ出したくて、だけどほんの少し怖くなって——、目をそらせてしまった。
「だからさあ? ほら、ギュッと抱っこしてー優しく起こしてー」
こんな私の気持ちを察しているのかいないのか。デンちゃんは、そういって私の体に足を巻き付け伸し掛かってきた。重い…。
「いた、た」
「ショコちゃん」
「んー」
「なんかヘンな夢見た」
そういって頬を擦り付けてくる。久しぶりのデンちゃんは小鳥のような可愛いキスをした。
「まだドキドキしてる。ほらわかる?」
そして自分の胸元へわたしの頭を抱え込んでいく。たしかに感じる鼓動。
もしかすると私が枕元であれこれ考えていたのが、デンちゃんの夢に影響してしまったのかもしれない。
「……どんな夢?」
「肝心なそれは忘れたけど」
「ふ」
ふふふふ。
何がおかしいのかわからない。
だけどデンちゃんの顔を見ると眉が下がってハの字になっているし、まだ眠そうだし。
私に吊られたのかデンちゃんも笑いはじめ、なぜか声を落として笑う私たち。なんだかくすぐったくて夢みたい。
でも夢じゃない。そういえば今日、私も一緒に瑠美のところへいく。
デンちゃんがいなくなったあと、瑠美とは一度だけ会った。挨拶程度だったけれど。桐生さんと一緒の時だった。
彼がデンちゃんや瑠美の名前を口にしたことはないといって等しかったけれど、一度だけきちんと話してくれたことがあって——。あれは、いつだったかな。
デンちゃんが姿を消してくれたおかげで、自分と瑠美の関係も断ち切ることができた、と話した桐生さん。
彼にデンちゃんを紹介したのは瑠美なのだし、その以前からふたりは馴染みだったのにもかかわらず、そんなことをいう桐生さんの言葉を、そのときは理解できずにいた私。
すると桐生さんは、ふっと笑ってこういった。
『瑠美が祥子にもちゃんと謝らなきゃいけないな、といってたよ』