ガラクタ♂♀狂想曲
「こっちでの仕事もあるし、すぐ戻ってくる。必ず」
デンちゃん。
なんか、すごいよ。
だって私、なんにも変わっていないのに。ただ年を重ねただけで、なにも成長していないんだよ。
「必ず」
デンちゃんの腕に抱かれた。その手にギュッと力が籠ったのがわかる。
本当に、私なんかでいいの?
デンちゃんがいないあいだ自堕落になって、それから桐生さんにも抱かれてしまったのに。
でもそれは口に出せなくて。
黙っているのも胸が苦しくて。
デンちゃんが眩しくて。
「——違うのデンちゃん」
「ん?」
「なんか逞しいなあ、って思う」
「んんん?」
私の言葉に、なんのことだろうとばかり目を丸くして首を傾げたデンちゃんは右手を腕まくりしたあと力こぶを作った。
「違う。凄いなあって。人って変わるんだなあって」
「そ? 俺、変わった?」
「うん」
「少しは成長したのかな」
そう言って、どこか嬉しそうに口を横に結ぶ。
「私なんかが帰りを待っててもいいのかなって思える。デンちゃんは私のことなんか気にせず、思い存分、やりたいだけ、もっとどんどんやったらいいのになあって思ってきてさ…。だから私の許可とか——、」
自信がなくて。だから言葉に詰まってしまった。
「今のショコちゃんは、なんかちょっと喋りすぎ」
するとデンちゃんはそういって私の手を取った。爪の先を親指で撫でてくる。
「こっち見て」
ダメだ。まっすぐだ。
どうしたらいいの。
それに反して、気持ちは溢れ出てしまう。
そのまっすぐな視線に。