ガラクタ♂♀狂想曲
「これからはダメだからね? ずっと俺のことだけを見ててよ?」
「うん」
「よろしい」
なんだか不思議。
こんな未来は想像もしていなかった。
今日は本当にいろんなことを話してくれるデンちゃん。
だけど私の両親の前に立つと、おりこうさんにすましてて。
「おじゃまします」
すっと頭を下げたデンちゃんは挨拶が済んだあと、少しはにかんだようにも見える表情で私を見た。
それからリビングに通され、みんなでテーブルを囲む。
見慣れた家族の中にデンちゃんがいる不思議な光景は、私までなんだか緊張してしまう。自己紹介を終え、ちょっとした沈黙。
するとデンちゃんが、さっと口を開いた。
「さきほど、祥子さんから弟さんのお名前が吉和さんと伺いました。祥子さんと、吉和さん、合わせて吉祥。とてもいいお名前で、僕、感動しました」
この言葉で口に手を当て微笑んだ母。父は小さく頷いた。なぜかこの席に一緒な弟は、自分の名前を言われ驚いている。
「これからは僕が、大事にしていきたいと思っています」
デンちゃん。さっきあんなふざけたこといってたのに。
かっこよすぎるよ。
すごいな、やっぱり。
「まだ駆け出しの身で、きちんと生計が立てられず、すぐに結婚することはできません。ですが、そういう気持ちでお付き合いをさせていただいていることをご理解していただきたく思い、ご挨拶に伺いました」
「そんな堅苦しい挨拶いらないですよ」
「ですが、」
「テレビで見たことあるから大丈夫よ。ね? お父さん」
ちょっと待って。
不意打ち過ぎるよデンちゃん。