ガラクタ♂♀狂想曲
「———あ、そうだショコちゃん」
「んー?」
「そういやあのときの元カレって、まだ連絡あったりする?」
「ないけど?」
それどころか、すっぱりと連絡は途絶えていた。そういやデンちゃんが、あのときあいつを顔面血まみれにして——。
じつは、あの日、私は就職活動をしていた。大学を出たのにも関わらず、だけど面倒でキャバ一本に絞った私。そして、その日は友だちと買い物をして、夕飯も一緒にする予定だった。
"違うんだ、祥子ッ"
ドアを開けたとき、そう叫んだあいつ。
玄関の鍵すら掛けていなかったくせに。
一度目のときは、私が帰ってきたことも気づかないほど夢中だったのくせに。
"…なーんだ、お前も男いるんじゃン"
あいつがチラッと顔を傾けてそう言ったとき、私を押しのけたデンちゃんが後ろから飛び出してきた。
"——しょ、祥子ッ、俺が悪かった。こいつ止め——ッぐはッ"
わけがわからず、というか腰が抜けてしまった私はその場に座り込んでしまった。だってそのとき私が止めようにも、名前も知らない男だったデンちゃん。
"……ショコちゃん。あいつ殴っちゃったけどよかった?"
あれ? おかしいな。
そういえば最初からショコちゃんって呼ばれた気がする。だけど私も、かなり飲んでいたから記憶もとびとびだし自信がない。
「ねえデンちゃん?」
狭い湯船でデンちゃんに背中から抱きしめられている私。部屋に乗り込む前のデンちゃんと——、あのときと同じで私からは顔が見えない。だけど違うのは、私がデンちゃんの胸へ身を預けるようにもたれている——、
「ねえ?」
デンちゃんは私の手を持ち、それを目の前でパチパチと合わせるのに夢中で、飛沫がときどき顔に飛んできた。