ガラクタ♂♀狂想曲
「——は?」
『あの子が客に本気になるわけないでしょ? 貴女、それも見抜けないほどなのかしら』
「あの私、客じゃないですけど」
『みんなそう思ってるわよ』
「意味がわかりません。それに私、愁なんて知りませんが」
だけどとにかく、デンちゃんが私のことを瑠美には何ひとつ言っていないことはわかった。それだけはわかった。これでスッキリ。
『あらそうなの? だけどどうせ似たようなものでしょ』
デンちゃんにとって私の存在って、きっと言うに値しない。それだけなのだ。やっと胸のつかえがとれた。
「デンちゃんは、お友だちです。しつこく電話が鳴っていたからお急ぎの用件かと思って私が代わりに出ただけですから。お話の意味がよくわかりません」
これで、もしかしたらデンちゃん私のこと好きなのかな? とかいう淡い期待とか、しばらく残るであろうキスマークを見ても頭を悩ますことがなくなった。瑠美の性格云々より、これはこれからの私にとって収穫が大きい。
そして携帯を切る。呑気な鼻歌が聞こえてくるバスルームに向かってクッションを投げつけた。
「ばかデンッ! 早く上がれッ!!!」
なんか悔しいッ!すごいムカついてきた!!!
だってどうして私が赤の他人に、あんなことを言われなくちゃいけないの?
それに人を枕呼ばわりしやがって!
「あーーー、もおッ!!!」
このイラつきを抑えるためにも煙草へ火をつけ大きく吸った。その煙に目を細め、だけどすぐに収まってくれそうにもない。
大体なによ、あの女。それにデンちゃんもデンちゃんだ。エッチしたら報告するとかって言ってたれけど、いつでもどうぞって感じだったじゃん。
「どこがいいの、あんな女」
カラカラとドアが開いたバスルームのほうを睨みつけ、灰皿へ煙草を押し付けた。