ガラクタ♂♀狂想曲
「なにいってんのショコちゃん」
「だけど堂々と見せたら効果激減かな。チラリズムでいくのがいいかもね」
「なにが?」
「いままでさ? ずうっと自分のことしか見てなかったデンちゃんが、人のものになりそうになると瑠美も途端に欲しくなるって。だけどこれが人の常でしょ?」
「——は? え? それ本気?」
「そうよ?」
「馬鹿にしてる? そんなんで瑠美は——」
「デンちゃん甘やかしすぎなのよ。あんないい年したおばさんを」
「おい」
「はいはい」
「ショコちゃん」
「はいはいはい、ごめんね」
なんであんな女の、どこが好きなんだろう。騙されちゃってバカみたい。
「あのさショコちゃん、ちょっと」
いままでになく落ち着いた低い声。そしてデンちゃんは、大きく息を吐き出した。
「ショコちゃんは、瑠美のこと知らないだろ」
ゆっくりまるで私をたしなめるかのようにそう言い、もう一度息を吐き出す。
「さっき何回も電話鳴ってたから、デンちゃん遅いし私が出たの」
すると少し眉を寄せ、イラついたように煙草へ手を掛けるデンちゃん。私はそれを目の端で捉えつつ、続けて口を開いた。
「普通さ?彼氏がいて一緒に暮らしているのに、デンちゃんを朝っぱらから呼び出す? しかもいい年した女がアシカとか言ってバカみたい」
「おい、本気で怒る。黙れよ」
「私がどう思おうと関係ないのだし、いいじゃんべつに」
「お前なー、」
「デンちゃんはそんな女がずっと好きなんでしょ? だからキスマークは使える手だって言ってるんじゃん感謝してよ」
「おい祥子」
「……なによ」
急に呼び捨てで。
「言いすぎ」
「——せいぜい頑張ってきてね。ばいばい、さようなら。もう顔も見たくないから。」
そしてデンちゃんを、ここから追い出した私。