ガラクタ♂♀狂想曲

「ショコちゃんが俺のことを"デンちゃん"って言ったのに驚いてた」

「…なんで?」


するとデンちゃんが目をクリクリと丸くした。私はこの顔が結構好きだったり。


「まあ飲んで」

「はあ、それではいただきます」


だけど口に含んだビールはほろ苦く、こくりと喉が鳴った。それにこの部屋で嗅ぎなれないデンちゃんに纏う香水が、私の気持ちをしゅるしゅるとしぼませる。


「あのさショコちゃん」

「なに」

「俺、ショコちゃん好きみたい」

「——は?」


耳を疑った。というより空耳?
それとも私、たったあれだけのお酒で酔ってるとか。


「携帯忘れたの、わざと」

「へ?」

「だってあの携帯、ショコちゃん以外のアドレス入ってないもん。それ、あそこに置いてきたし」


え、ええっと。


「なんか酔った勢い? まあ戻ってくる期待はしていなかったから棄てたも同然なんだけど」

「……棄てた?」


手に持っていた缶を思わず握り締めてしまい、それがペキペキッと音を立てる。これら一連のデンちゃん発言は、ちょっと冷静に分析しなくては。

< 66 / 333 >

この作品をシェア

pagetop