ガラクタ♂♀狂想曲
「デンちゃんのバカ!」
だって女の人の匂いがするよ。服からも、肌からも。髪も。
違う人みたい。
「ショコちゃん」
するとデンちゃんはそう言って私の髪を撫でてきた。全身でデンちゃんを拒んだのにかかわらず、頬へ鼻を擦り付けてくる。私はさらに身を固まらせ、唇をぎゅっと結んだ。
「抱きたい」
ぼそりと低い声でそう言うデンちゃん。変わらず手は私の頭を撫でた。
「——イヤ」
「なんで」
「私、こういうの、ほんともう嫌ッ」
叫ぶようにそう言うと同時に、なにかの線が切れたかのように涙が溢れ出した。慌てて両手で顔を覆う。
自分がこんなことで泣くだなんて、ちょっと信じられない。
「う゛っぐ」
だけど一気に溢れた熱い涙は止まってくれず、それどころかその両手をすり抜け、そして頬を伝うことなく私の耳に向かってどんどん流れた。
「ショコちゃん」
熱を失わないまま溢れる涙は、勢いよく首にまでまわってそこからぽたぽた落ちる。
なんだか息も苦しくて。だけど静かにそれはどんどん流れた。だってデンちゃんが、ただ私の頭を撫でている。
「ごめんショコちゃん」
そして何度も言う、ごめんって。