ガラクタ♂♀狂想曲
「う゛」
止まらない。止まらないよデンちゃん。
「もうしないから」
好きなの。すごい好き。だから嫌なの。
「ごめん。だから泣かないで」
そして顔を覆う私の手に"はあ"っと息を吹きかけたデンちゃん。そこへ口付けポンポンと優しく肩を叩いた。
「——ショコちゃん、そのままでいいから聞いて」
そっと囁くような低いデンちゃん声。私もそれに応えるかのように呼吸が徐々に乱れをなくしていった。
だけど沈黙が長い。
涙の勢いも弱まり、そして身を任せるようにデンちゃんの言葉を待つ私。
「…あのさショコちゃん。実は俺——」
ようやく口を開いたデンちゃんだけど、時計の音が耳障りなほどいやに煩く耳に響く。流した涙が熱を失い、冷たくなってきた。
痺れを切らしてしまい顔を覆っていた手をどけた私。そしてデンちゃんを見上げた。
「……」
すると何も言わず、ふっと微笑んで私を見つめるデンちゃん。だけど言葉を発さず。そのまま見つめあってしまう。
どこかしょんぼりしているデンちゃんは、すこし寂しそうな影を瞳に落としていた。
「……キス、する?」
捨て犬にも見えてしまう姿と、沈黙に耐え切れず私がそう言うと、触れるだけの軽いキスをしてきたデンちゃん。表情がほんのすこし明るくなった。
そんなデンちゃんを見ると、なんだかどうでもよくなってくる。今度は私のほうから唇を重ねた。
デンちゃんの息遣いが近い。絡まる舌からは、変わらぬ煙草の味。
「——いいの?」
「いいよ」
頭の中でもう一人の私が"ダメ"って言うけれど、その思考が一瞬でかき消されてしまう。だってデンちゃんの息が、指が、愛でるように私の身体に纏わりついていった。