ガラクタ♂♀狂想曲
「ねえデンちゃん。私の気持ち、少しは考えたりする? 今までは考えてなくても、もし私を大事にしたいなら、これからは覚えておいてほしいことがある」
「うん、なに」
「私はデンちゃんが好き。忘れないで」
するとデンちゃんは、すっと身を起こす。私から、視線を外してしまった。
ぽっかりと空いてしまったスペースは、デンちゃんを模ったまま少し沈んでいる。
そして一度大きく息を吐き出した私。
「———私の気持ち、忘れないで。デンちゃん」
その背中に向かってもう一度、今度はかみ締めるようにゆっくりと、落ち着いた口調で声を掛ける。
「ショコちゃん」
するとこちらを向かず、そのままの体勢でデンちゃんが口を開いた。
「酔ってる? 少し寝たほうがいい」
少し息を吐き出すデンちゃん肩が、小さく上下した。
「残念ながら、酔ってない」
「そっか」
そして小さく鼻を吸ったデンちゃん。ゆっくりこちらへ身体を向け、私の顔を覗き込んでくる。
その先に続くであろう言葉を待った私だけれど、デンちゃんはなにも言わず。
そのまま、またしばらく見つめ合った。
知らない人みたいな顔。こんなにデンちゃんて大人っぽい表情できるんだ。