ガラクタ♂♀狂想曲
壊れモノ
デンちゃんと過ごす日々がはじまった。
これまでは、うちへ来ても朝まで過ごすことは数回あった程度。学校もあるデンちゃんは家に戻っていた。ふたりで迎える朝はいつもより眩しくて、ほんの少しくすぐったい。
「おはよ」
だけどデンちゃんの寝起きは悪い。というかボーっとしていることが多く、そういうときはいつもぼんやりした目で私を見た。全身麻酔から醒めたかのような目覚め方。
もしかしてデンちゃん自身、ここにいるのも忘れているんじゃないかと思うほどで、最初のうちは名前を呼ばれるまでドキドキした。
「……ショコちゃん、おはよ」
私の頬へ手を伸ばしてくるデンちゃんは、なにも言わず親指でくいっとなにかを拭い、首を傾げて
「怖い夢見た?」
「違う。これはあくび」
「なんだ」
くすくすと小さく肩を揺らせ笑うデンちゃん。
欠伸、もあるけれど、幸せすぎる穏やかな朝を迎えたことに少し感動して涙が出てしまった。だけどクズ生活には違いないわけで。
いまが楽しければ、それでいい。と、あれこれ目を瞑りたい衝動にも駆られてしまう。それにデンちゃんは、まだ20歳。
「ねえデンちゃん。これどう? この服でいいかな」
「——ショコちゃんが、今日着飾る理由は一体なに?」
「はじめて会う人だし、デンちゃんの友だちでしょ?」
今日は私の友だちと、デンちゃんの友だちとで合コンをやることに決まっていた。
そのほうが一気に出来るし、と言ったのはデンちゃんで。大学生と社会人の合コンになるわけだ。しかもK大生という高スペックだったデンちゃん。
私の友達も、みんな立派な社会人。私ひとり、こんなぐーたらな生活を送っている気がしてならない。