ガラクタ♂♀狂想曲

「どれにしよう」

「適当でいいじゃん」

「そういうわけにはいかないでしょ」


デンちゃんは前と変わらない。瑠美の話をしなくなったことを除けば。

だけどデンちゃんが瑠美と連絡を取り合っていないわけでも、会ってないわけでもないと思う。だってときどき、あの日の匂いがした。


「デンちゃんは、その格好で行くの?」

「んー、そのつもり」

「……じゃあ、私もこれでいいかな」


デンちゃんが何も言わないから、私も何も聞かないし知らない。普通に毎日を過ごしていた。

課題をやるときは眼鏡男子になることや、字が綺麗なこと、それから集中力が凄いこと。ドイツ製のレザーペンケースを使っていることとか、持っている小物はどれも学生らしからぬ落ち着いた雰囲気のものが多いことなど、これまで知らなかったデンちゃんの姿を見せてくれていた。学校でのデンちゃんは、どんな感じなのかな。


「ねえデンちゃん? デンちゃんの友だちって、みんな20だよね?」

「20か21?」

「年上ばかりだけど、大丈夫なの?」

「……あのさ、ショコちゃん」


待ち合わせ場所まで、手を繋いで歩く。絡めた手の先を見ればデンちゃん。

さっきまでは、いつものデンちゃんだったのに、待ち合わせ場所が近づくとちょっとヘンになってきた。妙に落ち着かないと言うか。


「あー…、やっぱいい」

「なによ」

「——俺の暴露はやめてね」

「なに暴露って?」

「いいから」


そして絡めた手と反対のほうの人差し指を立て、指先で口をトンっと押さえた。
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