ガラクタ♂♀狂想曲

するとデンちゃんは私からふっと視線を外し、口元を綻ばせた。
なんとなく、その頬へ手を伸ばしてみる。


あ。


「——デンちゃん?」

「ん」


急に視界が滲む。
だってデンちゃんの頬が濡れていた。デンちゃんが泣いている?


「………どうしたの」

「なにが?」

「デンちゃん?」


これは夢? まだ夢でしょ。
そうなんでしょ?

だってどうして。


「デンちゃん」


慌てて私が身を起こそうとすれば、デンちゃんの手が伸びてきた。


「そのままショコちゃん」

「———どうしたの? なにかあった?」


デンちゃんは静かに首を振る。


「だってデンちゃんッ」

「なにもない」


泣いてるじゃん。


「……デンちゃん」

「大丈夫」


夢なら、どうか早く醒めてほしい。

それから微動だにしなくなったデンちゃんは、か細い息を吐き出した。それはまるで気配を消しているかのようで。

静かな時間が流れる。

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