ガラクタ♂♀狂想曲
「——デンちゃん」
「ん…」
声が低すぎて、耳を澄まさなければよく聞こえない。だけど微かに応えたデンちゃん。
「デンちゃん」
私、少し緊張している。
だって手は震えるし、コクリと喉が動いてしまった。避けられたら、どうしよう。
私を見つめたまま動かないデンちゃんへ、恐る恐る躊躇いがちに両手を伸ばした。私の指先が、デンちゃんの髪に触れる。
だけど私の手を避ける気も、嫌がる様子もないデンちゃん。
私はそのままデンちゃんの頭を抱え込むように、自分の胸へとゆっくり引き寄せた。それに逆らうことなく、そのままストンっと私の胸へ顔を埋めたデンちゃんの髪が頬にあたる。
そっと頭を撫でれば、短く鼻を吸う音が聞こえ少し肩が震えたデンちゃん。私の心臓まで、一緒に揺れてしまう。
「デンちゃん」
返事はない。
「———私さ、腕枕好きになるし、煙草もやめる」
どうしてこんなに壊れそうなのデンちゃん。いまにも私の腕の中から、すうっと消えてしまいそう。
「人工呼吸も練習するから」
だからお願い、デンちゃん。そんなにひっそりと涙を流さないで。
「ね?」
それからずっと、デンちゃんの小さな頭を撫でた。
少しすればどうやら落ち着いたようで、
「———ありがと。今度、溺れてみる」
だけどこんなふうになってしまうだなんて、私が寝ているあいだに一体何があったのだろう。