真っ白なキャンバス(仮)
それとも、母親の面影が残る俺たちと顔を合わせるのが辛いのか?
本当のところは俺にはよく分からない。
最近では1ヶ月に1度顔を合わせるくらいだー。





夏休みに入ってから、恭平と綾乃は毎日のようにうちに来るようになった。
駅に近い我が家は2人にとって都合が良い場所なんだそう。
恭平にとってはバンド練習のスタジオが開くまでの暇つぶし。
綾乃にとっては"夜遊びの拠点"(らしい…)。
そんな感じで、2人は夕方近くになるとひょこっと顔を出す。


「おじゃましまーす! あ、恭平もう来てたんだ」

すっかり自分の家のようにズカズカと中に入ってくる綾乃。

「お土産ー♪」

綾乃はそう言って俺たちの前に袋を差し出した。
それは駅前にある有名なたこ焼き店の袋だった。

「お、たこ焼き?珍しく気が利くじゃん」
「一言余計だよ、恭平」

3人でたこ焼きを食べてまたいつものように別々のことを始める。
俺はスケッチブックを広げ、恭平は曲作り。
綾乃は携帯を片手にタバコを吸う。
ずっと昔から俺たちはこうしていたかのように、ごくごく自然にこの空間を共有するー。

「そういえば海斗、眼鏡は?」
「ああ。コンタクトにした」
「そうなんだー。やっぱり綾乃の言った通りだね」
「?」
「結構かっこいい♪」
「…」

別に綾乃に言われたから眼鏡やめたワケじゃない。
たまたまコンタクトにしようかなって思ってたところだった。

「かっこいいってより"可愛い"じゃねぇか?海斗の場合」

恭平は少し離れた所でニコニコしている。

「かもねー?海斗、女顔だもんね」

窓を半分だけ開け、顔を出しながらタバコを吸う綾乃。
デッサンをしながらその様子を眺めていた俺は思わず口を開いた。

「綾乃ってさ、いつからタバコ吸ってんの?」
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