真っ白なキャンバス(仮)
山下 海斗(やました かいと)、17歳。
美術部に所属する高校3年生。
基本的に人間は嫌い。
何事にも冷め切っている。
恋愛に興味ナシ。
もちろん気の許せる友達なんかいないー。
「すっごい青空…」
街を一望できる学校の屋上。
ここは俺の秘密基地だ。
薄暗い階段を登ると、屋上へと続く重い扉が現れる。
そこには『立ち入り禁止』の張り紙。
だけど何故か扉には鍵がかかっていない。
それに気づいたのは半年くらい前のこと。
それ以来ここは俺の秘密基地になったんだ。
学校の中で唯一、心が休まる場所。
誰も知らないヒミツの場所。
そう思ってた。
今日、この瞬間まではー…。
いつものようにスケッチブックを膝に乗せて座り、ウザいくらい真っ青な見上げた。
5月のポカポカ陽気に自然と眠気が襲ってくる。
時間にすると数分足らずのうたた寝。
ふと誰かの気配を感じ俺は目を覚ました。
「あれ?先客~?」
「…!」
その声に俺は慌てて顔を上げる。
「こんな所で何してるの?」
ゆっくりと声のした方向を見ると、そこには1人の女が立っていた。
その女は不機嫌そうな表情で俺のことを見下ろしている。
髪は明るい茶色で私服姿。
整った顔立ちにすらっとしたスタイル。
…どう見ても生徒ではなさそうだ。
でもこんな美人で若い教師なんていたっけ?
それとも事務職員か何か?
「鍵開いてたんでつい…」
俺は立ち上がってズボンに付いた埃を払う。
「すみませんでした」
面倒なことになるのが嫌で、そそくさと扉の方へ向かった。
「別に出て行かなくてもいいじゃん」