真っ白なキャンバス(仮)
2.屋上の住人たち
あれ以来、"屋上の住人"は3人になった。
俺と綾乃と、そして恭平。
昼休みや放課後、来る度に誰かしらと顔を合わせてしまう。
俺はスケッチブックに向かい、綾乃は鼻歌交じりにタバコを吸う。
恭平はギターを片手に自分の世界。
3人とも好きな時間にやって来て、好き勝手なことをして帰っていく感じ。
クラスメイトたちは誰も俺たち3人が知り合いだなんて思っていないはず。
だって…
俺は何考えてるか分かんないような地味~な美術部員。
綾乃は独特のオーラを放つ謎だらけの美人女子。
恭平はいつも人に囲まれてて後輩からもモテモテのバンドマン。
どっからどう見ても3人を繋げるモノなんてない。
「ねーねぇ!!恭平、海斗!」
タバコの火を消した綾乃が立ち上がって、俺たちの前へとやって来る。
「ん?」
「何か気づいたことない?」
綾乃はそう言って体をクルッと一周させた。
「んー、何?」
曲作りに夢中な恭平が面倒くさそうに顔を上げる。
「ほら!いつもと違うでしょ?綾乃」
俺も綾乃を見上げる。
「……あ。制服?」
今日会った時から何か違和感があると思ってたら…。
いつも私服だった綾乃が今日は制服を着ている。
「当たり!海斗クン♪」
「あー、言われてみれば」
恭平も納得の様子。
「どぉ?可愛い?」
「んー。普通」
恭平はまた面倒くさそうにギターに視線を落とした。
「ひっど!入学式以来、初めて着たんだよ」
モデルのように1人でポーズを決める綾乃。
「でも突然どうしたんだ?」
「最近、真面目に学校来てるでしょ? でー、もう服のネタもなくなったし。こっちの方が楽かなって」
「そういや最近よく来るようになったよね」
「うん!ここ知ってからほぼ毎日来てるよ。偉い?」
って…、当たり前だと思うんだけど?