牡丹町の先生






「家の中を案内してやる」



人の第一印象なんてのは、案外当てにならないものだと思った。


見たくればっかり気にして、磨いて、そのくせ中身は空っぽで、自分を見失ってこんな所まで来て。

そんな自分に虚しくなってきて、恥ずかしくなってきて、また顔を隠したくなった。



「ここがトイレ。隣は風呂...って、聞いてるか?」

「は、はい!聞いてます」






でも、私は、そんな私を変えたくて全部捨ててきたんだ。



ここまできたら、もう戻ることもできない。


どう変わりたいのか、どう変わったらゴールなのかも分からないけど。




「あと、この部屋は俺の仕事部屋だから。立ち入り禁止」

「は、はい」




1番奥の部屋の襖はしっかり閉まっていて、木の板に立ち入り禁止と汚い字で書かれた看板がぶら下がっている。

この人、なんの仕事してるんだろう。

大家さんって、仕事しなくてもいいのかな?不動産とかかな?




「じゃあ今晩から、飯。しっかりよろしく」

「あ、はい!」




まぁ今はそんなこと、いいか。




とにかく私は今日から何も知らない、

この町で、この家で、

新しい自分を探していくんだ。




















< 14 / 24 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop