牡丹町の先生
それから私は、お父さんと2人になった。
仕事と慣れない家事の両立で毎日疲れてるお父さんを見て、
いっぱいお手伝いをしようと思った。
ワガママも言うのは辞めようと思った。
寂しくても、それは口に出さないと決めた。
でもそれは、お父さんも私の為に一生懸命頑張ってくれてるのが分かっているから
苦では無かった。
料理なんてした事ない癖に、本を見ながらヘタクソなお弁当を毎日作ってくれたり、
仕事で帰りが遅いのに、それから洗濯や掃除をしていたり、
そんな姿を見ていたら、とてもワガママを言う気にはなれなかったし
むしろお父さんを楽にする為に、自分にできる事を増やさなきゃと必死だった。
一人きりで食べる夜ご飯に慣れるのには時間がかかったけど、
公園や遊園地に出掛けることは、滅多に無くなったけど、
でも、寂しいのは私だけじゃない。
我慢してるのは私だけじゃない。
頑張ってるのは私だけじゃない。
"お父さんと2人で生きてくれるかい?"
私は1人じゃない。
お父さんと、2人だから。
そう自分に言い聞かせて、寂しさや不安や悲しさをいつも紛らわせていた。