牡丹町の先生
でも私が中学に入学した日。
______忘れもしない、あの日。
「紬、ただいま」
いつも通り玄関の開く音と、お父さんの声が聞こえた。
いつも21時は余裕で過ぎるのに、今日はまだ19時過ぎ。
私は嬉しくなって駆け足で玄関へ向かった。
「お父さん、おかえり!早かった......ね、」
リビングから出た瞬間、お父さんより先に知らない人が目に映った。
ダレ?
お父さんの隣に、知らない女が居た。
若くて、キレイで、髪が長くて、香水の匂いがする、お母さんとは全く違うタイプの女。
「この人は、笹木真弓さんっていうんだ、」
「初めまして、紬ちゃん」
言いずらそうに話すお父さんと、少し照れて挨拶をする女の人。
すぐに分かった。
この2人がどういう関係なのか。
ここに何をしに来たのか。
「紬、お父さん...この人と再婚しようとおもうんだ」
全身の血の気が引いた。
一瞬で地獄に突き落とされた気がした。
言葉に出来ない感情が、私の心を搔き回し、吐き気すらしてきた。
裏切られた。
真っ先にそう思った。