牡丹町の先生
終点、牡丹町
_______カタン..コトン....
目を覚ますと、電車の外は見慣れない風景が広がっていた。
早朝から赴くままに電車を乗り継ぎ今や日が傾きかけている。
都会の満員電車と打って変わって、車内にいる人の数は5人程度。
『次は〜終点....』
終点かぁ...
大きく伸びをして、今にもはち切れそうな位の荷物が入っているパンパンのボストンバッグを2つ、両肩に掛けた。
そして、この荷物が今の私の全て。
「牡丹町...」
初めて見る町の名前。
駅の改札を出て大きく外の空気を吸い込んでみる。
高い建物は見当たらない。
知らない人達と知らない町。
遠くの空にまん丸の夕日が綺麗に見えて、風がとても気持ちよくて。
遠足の前日みたいなワクワクと、少しの不安。
でも、きっとどうにかなるっていう自信があって。
もう、後には戻れない。
怖いけど、戻りたくはない。
「とりあえず、お腹空いたな...」
ていうか、荷物が重すぎる。
ファミリーレストランとか無いかな、なんてキョロキョロしながら知らない町を思うがままに歩いてみる。
全部、私次第。
右に行くか、左に行くか、どっちに行ったってどうせ同じなのに3分近く迷ってしまう。
ドキドキする。
でも嫌じゃ無い。
私の100万円の使い方。
それは、昨日までの私自身を捨てる事、だった。