お説教から始まる恋~キミとの距離は縦2メートル~
「あ~~~、やっぱりシンちゃん最高ぉぉ~~~~!」

我が家の風呂場は彼らのライブ会場だ。
好きなときに好きなだけオーイングやコールを入れ、時に振りコピし、タイミングに合わせてジャンプする。
推しメンの名前を叫び、頼む!こっち見ろ!はうん、指差しもらえたぁ!なんて妄想は、最高にわたしを幸せにした。
風呂場だけに全裸だが、心の中では推しカラーのペンライトを灯して振りまくっている。

ちなみに、実際のライブには行ったことがない。
なぜなら人の多いところに行きたくないからだ。
にわかオタクと罵りたければ、そうするがいい。


「もう2時か…明日ゴミ出せるかな~。」

ノリノリでライブという名のシャワーを終え、時計を見ると、深夜2時をまわっていた。
明日は週に2回ある可燃ごみの集荷日だが、引っ越してきてから1度も出せていない。
朝8時までに近所の集積所に持っていく決まりなのだが、何とか目が覚めても外出するのはつらくて、機会を逃してしまっていた。

化粧水をつけながら、たまりにたまったごみに目を向ける。
すでに満杯のごみ箱の蓋に段ボールを重ね、ビニール袋をかぶせて使っている状態だ。
自炊をしていないので生ごみは出ないが、コンビニ弁当の容器やプリンのカップは洗わずに放り込んでいる。
そろそろ梅雨入りすることを考えると…ためこまず捨てた方がいいに決まっていた。



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