お説教から始まる恋～キミとの距離は縦２メートル～

繰り返すようだが、反省した。
音楽はイヤホンで聞くようになった。
スピーカーで流すときは音量をかなりしぼり、電話をするときは窓を閉めて小声で、もともとスリッパを履いてはいたが、足音にも気を付けた。
玄関のドアや部屋の窓はもちろん、トイレのドアの開け閉めにおいても、静かに閉めるように心がけた。

それでも、反射的にどうしようもないことは起きる。


たとえば、トイレの網戸の外側にトカゲかと思うほど大きなヤモリが張り付いているのを見つけたらギャッと叫ぶし、「びっくりするじゃんもう～！」と話しかけてしまうでしょう？

イラストや漫画投稿でおなじみのＳＮＳで素敵なことになっている推しキャラを見つけた瞬間「はぁああーー！」と腹の底から奇声が漏れるし、パソコンの向こう側にいらっしゃるであろう描き手さんに向かって、感謝をこめて拍手喝采するでしょう。（もちろん即座にブックマークに追加）

プロデュースしているアイドルがメインのイベントストーリーを読んで雄たけびをあげるのだって展開に感動させられたからだし、「よかったねぇ、よかったねぇ」と嗚咽を漏らしてキャラに話しかけるのも、おばあちゃんが孫に話しかけるのとおんなじなんだよ。

それから、


「あ。」


そうそう、こういう時。

片付けるのが面倒でキッチンに積み上げていたカレー鍋や雪平鍋に腕が当たって、床にばら撒いてしまった時ね。
ステンレス製のため割れはしないが、床に落下した時の金属のこすれる激しい音に、思わず肩が飛び上がる。
カランカランと蓋が転がっていくのを目で追いかけながら、こういうのは仕方がないじゃないか、わざとじゃないんだから、と、個人的には思うのだが、





「うるっせぇなー！！何時だと思ってんだ！！！」