お説教から始まる恋~キミとの距離は縦2メートル~
インスタントのコーヒーの粉を水で溶かしたグラスに氷とミルクを入れ、マドラーで適当に混ぜる。
カラカラと響く涼しげなこの音が好きだ。
梅雨も夏も基本的には鬱陶しくて好きではないが、日本の四季が織りなす風情あるものは別である。

日が落ちた後の静けさも。
網戸の向こうから聞こえる、木々がそよぐ音も。

ん?
木々がそよぐ、音?

「あれ、もしかして雨やんでる…?」

網戸越しに暗い庭を覗いても雨が降っているかどうかは確認できなかったが、雨の音は聞こえない。
これはチャンスかもしれないぞ。


淹れたてのアイスカフェオレをごくごく飲めるだけ飲みこみ、小銭入れを取りに走る。

服装は…歩きだしこのままでよし!
髪型、うん、しょうがないね!
メガネメガネ…あぁ、度があってないと夜は特に見えにくいなぁ。でもないよりマシか。

またいつ雨が降ってくるともわからない。
今のうちに行かなければ、明日も餓えと戦うことになる。
急がねば。

念のため傘を持ち、サンダルをつっかけ、玄関のドアを開ける。
ヤモリチェック、セーフ。
いってきます!


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