お説教から始まる恋~キミとの距離は縦2メートル~
音が出ないようにそうっとコンビニの袋を左手に持ち替え、右手の人差し指を窓に伸ばした。
つん、と指先が、窓枠のアルミサッシに当たる。

ばくん、と、大きく、心臓が伸縮した。


自分の部屋と同じ素材、いつも触り慣れているもののはずなのに、人の家のそれというだけでこうも違うのか。

指先が触れている場所から振動波、みたいなものが電流のように流れ、壁をつたってこの部屋をぐるりと一周取り囲んだ気がした。

触れるだけで透けて見える能力なんて当然ないが、家具の位置、部屋の暗さ、温度、湿度、あの人がどうしているか、何の根拠もないのに想像してしまう。


ごくり。

唾を飲み込んだ。


少しだけ、なら…。




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