お説教から始まる恋~キミとの距離は縦2メートル~
両手をタコのように動かしながら勢いをつけ、路地に向かって走り出す。

足がもつれてうまく動かない。
全身が、脳や肺までが凍ったように冷たく、息ができない。
じめっとまとわりつくサンダルが、汗ですべる。

それでも、逃げなくては。



背後でガララララッと勢いの良い音がして咄嗟に振り返ると、インテリメガネがこちらに向かって上半身を乗りだしていた。


「おい!!待て!!!」



ひぇぇえぇええぇぇえええ。



振り返りざまにちらりと見えたが、窓枠に足を乗せて、飛び越えようとしていた。

一寸の迷いなく。

たぶん、裸足で。




それから先はあっという間だった。
背後から近づく地を蹴る音が桁違いに速い。

ダメだ、追いつかれる…。

そう思った時には耳元で息を吐く音が聞こえ…。






「……オイ。そこで何をしていた。」








わたしは、男の腕の中にいた。




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