お説教から始まる恋~キミとの距離は縦2メートル~
第2章
許してください、出来心です!
ダイレクトに耳元に響く、ざらりとした低い声。
叫ぶのとも、怒鳴るのとも違う、
じりじりと追い詰めるような重たい威圧感のある声だ。
ゆっくりと息を吸い、吐いて、呼吸を整える。
そんなごく当たり前の空気の流れすら、この男の体を介していると思うと緊張してしまう。
今、自分はどういう恰好をしているのだろう。
冷静に考えようとするが、身体が動かないことしかわからない。
こんな時に、空腹なのを思い出した。
目の前が真っ白になる。
ああ。
コロッケパン。
食べたかった、な…。
「おい、大丈夫か。」
インテリメガネの声に焦りが加わった。
自業自得だが、極度の緊張と空腹で、口から魂が抜け出たような状態になっていたに違いない。
カクンと力の抜けた私の身体を支え直されて初めて、左手首をひねりあげられていたことに気が付いた。
つかまれていた部分に血流が戻り、じんじんと痺れる。
「……お前、上の階の奴だな。」
「……はい。」
素直に認めるしかなかった。
警察に突き出されても文句は言えない。
そうは言っても、網戸のサッシに触っただけだ。
じゅうぶん不審者だが、厳重注意くらいで、済まされないかなぁ………。
顔を上げるどころか、微動だにできず涙目になった。
それでも、視線が突き刺さっていることは痛いほどわかる。
足元の水たまりを見つめていると、インテリメガネは盛大なため息をついた。
「ここで話していてはご近所に迷惑だ。うちに上がれ。」
「え、でも」
「いいから上がれ。」
うっ。
人に睨まれるってこんなに怖いのか。
殺気を帯びた声で凄まれると、とてもじゃないが逆らえない。
わたしは罪人だ。囚人だ。
もう、どうにでもなれ。
叫ぶのとも、怒鳴るのとも違う、
じりじりと追い詰めるような重たい威圧感のある声だ。
ゆっくりと息を吸い、吐いて、呼吸を整える。
そんなごく当たり前の空気の流れすら、この男の体を介していると思うと緊張してしまう。
今、自分はどういう恰好をしているのだろう。
冷静に考えようとするが、身体が動かないことしかわからない。
こんな時に、空腹なのを思い出した。
目の前が真っ白になる。
ああ。
コロッケパン。
食べたかった、な…。
「おい、大丈夫か。」
インテリメガネの声に焦りが加わった。
自業自得だが、極度の緊張と空腹で、口から魂が抜け出たような状態になっていたに違いない。
カクンと力の抜けた私の身体を支え直されて初めて、左手首をひねりあげられていたことに気が付いた。
つかまれていた部分に血流が戻り、じんじんと痺れる。
「……お前、上の階の奴だな。」
「……はい。」
素直に認めるしかなかった。
警察に突き出されても文句は言えない。
そうは言っても、網戸のサッシに触っただけだ。
じゅうぶん不審者だが、厳重注意くらいで、済まされないかなぁ………。
顔を上げるどころか、微動だにできず涙目になった。
それでも、視線が突き刺さっていることは痛いほどわかる。
足元の水たまりを見つめていると、インテリメガネは盛大なため息をついた。
「ここで話していてはご近所に迷惑だ。うちに上がれ。」
「え、でも」
「いいから上がれ。」
うっ。
人に睨まれるってこんなに怖いのか。
殺気を帯びた声で凄まれると、とてもじゃないが逆らえない。
わたしは罪人だ。囚人だ。
もう、どうにでもなれ。