お説教から始まる恋~キミとの距離は縦2メートル~
何もない冷たい床に寝転がっていると、ふと、学生時代の記憶がよみがえる。
部活が終わってから数人でモップ掛けをした後、体育館に寝転がって色々な話をしたことだ。

お互いのクラスであった何気ない日常。
親や先生への愚痴。
時には勉強や進路の話も。
それから…好きな男の子の話。

青春だった。
青春、していた。

もう10年以上も前のことだけれど、ハッキリと思い出せる。

モップを掛けた後の床の輝き。
笑い声の響き方。
天井の格子に挟まったボール。


懐かしい。
思わず笑いがこみあげる。

今わたしの肌をくすぐるこの風は、あの時の風に似ているかもしれない。
この床も、あの体育館に似ているなら、むしろ気に入った。



「みんな、今頃どうしてるのかなぁ。」


29歳。
仲が良かった友達は、25を過ぎたあたりから次々に結婚していった。
一昨年くらいから出産報告も相次いでいる。

会いに行って、子どもを抱かせてもらって、彼とはどうなの、なんて聞かれて。
「次は莉那の番ね」なんて言われて、なんとなくそうなのかなぁと思っていた。
彼氏がいることに胡坐をかいていたと言っても過言ではない。
4年半付き合って、3年一緒に住んだのだからこのまま結婚するのかなぁと思っていた、けど。


『お前と結婚する未来が見えない』


ハッキリそう言われた。
むしろ、あいつが結婚のこととか考えていたことに驚きだったけれど。

正直なところ、私にも結婚する未来なんか見えていなかった。
だから、この別れは、お互いにとってよかったのだ。

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