例えば危ない橋だったとして

医務室を後にして、歩き出す。

体を動かすと、少し冷静さを取り戻せた。
先程は、やや錯乱気味だったのではないだろうか。
可愛くないことを言ってしまった……。
急に後悔が押し寄せて来て、頭を抱えた。


ドアの前まで戻って来たものの、しばし立ち尽くす。
心臓の音が次第に大きくなり、うるさい程だ。

入るしか仕方あるまい。観念してドアを勢いよく開いた。

わたしの存在が目に止まると、みんな口々に労りの言葉を掛けてくれた。

「大丈夫? もっと休んでても良かったのに」

「もう動いて平気なのー?」

全体に向けて会釈し、課長と係長に頭を下げてから、自分の席へと近寄った。
隣の黒澤くんと目が合って、心臓が一度大きく脈打つ。

「あの……色々とごめんなさい」

頭を下げ向き直ると、黒澤くんは優しい面持ちで目を細めた。

「何も」

怒ってないみたいだ……どうしてそんなに、穏やかなの?

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