例えば危ない橋だったとして
どういう弾みか、夜の暗い道路を、黒澤くんと手を繋いで歩いている。
なんで……? 手を引かなくても、わたし歩けるよ……。
やや手前で歩を進める、黒澤くんの後ろ姿を見つめた。
すぐ右横の車道を自動車が通り過ぎ、ライトがわたし達を照らす。
黒澤くん、わたしまた勘違いする。
こんなの、期待してしまう。
彼女は? いたら悲しむよ……戸惑いながら、胸がいっぱいで苦しかった。
「少し座ろう」
小さな公園が道の先に現れ、黒澤くんが促した。
わたしは周囲を伺いつつ、答えた。
「……こんな所でふたりで座って大丈夫かな……?誰かに見られるかも」
「茂みがあるし、暗いから誰かわからないだろ」
確かに公園は街灯が1本立っているだけで、ベンチの周囲はずいぶんと暗い。
黒澤くんがベンチに、どかりと深く腰掛け脚を組んだ。
不安が残ったが隣に座ると、わたしの後ろの背もたれに黒澤くんの腕が伸びた。
……何故、そこに手を……気配が伝わり、鼓動が急激に速まる。
身体が緊張で強ばった。
しばし沈黙が流れた。
黒澤くんはどういう意味で座ろうと言ったのだろうか……よくわからなかった。