例えば危ない橋だったとして
センチメンタルクリスマス
忘年会の翌朝、またしても皆に頭を下げてから席に着いた。
わたしが心配していた程には、皆わたし達のことを気にしていないようで、ほっと胸を撫で下ろす。
忘年会後のわたし達は、また雰囲気が変わったと思う。
以前のような気まずさは減り、僅かに恋愛の色を帯びたような、微妙な間柄。
自分ではそんな印象を受けた。
12月は、世間は年の締め括りで忙しなく動いているが、仕事上の申込は少なく、比較的穏やかだった。
黒澤くんが、積極的に細かい仕事や新たな仕事を教える時間を設けてくれた。
「此処の地下街は、住所が1丁目~3丁目に跨ってる。
図面付けてくれてたらまだ判断しやすいけど……」
「区画番号だけで判断出来るの?」
「こういう時は、住宅地図の最後尾に図面が載ってるから、確認して」
黒澤くんがキャビネットから地図を取り出し、戻って来た。
「ほら、区画番号と照らせば場所が特定出来るだろ」
「結構しっかり店舗名と何丁目かの記載されてるんだね。すごい」
「ビル設備が複数ある場合は特に注意して、地図を確認するようにしてみて」
説明が終わりメモをまとめていると、黒澤くんが小さく呟いた。
「今で6割くらいか……年明けたら教えてる時間なくなるから、今の内……」
後4割で一人前? そんな簡単な仕事でないことは承知しているが、単純に考えればそういうことだろうか。
わたしに早く仕事を覚えさせて、一人前に育てようという意識を感じた。
何か急いでいるような──