例えば危ない橋だったとして

そんな日々が続き、3連休も目前に控えた木曜日の終業間際。
明後日はクリスマスイブ、同期会が催される。
今なら聞けるかもしれない。今なら……。

デスクを片付けている黒澤くんの傍に、椅子に座ったまま近寄る。

「あの……黒澤くんさ……」
「なに?」

「……クリスマス会、来るの?」
「……行くよ」

黒澤くんが静かに微笑む。
やった……黒澤くんとクリスマスを過ごせる!

「じゃあ、楽しみにしてるね」

こんなことを言って良いのかわからなかったけれど、頑張って口に出した。
何だか、はにかんだような面持ちになってしまった気がする。

「……うん」

わたしの表情につられたのか、黒澤くんもやや恥ずかしそうに視線を逸らした。
そんな顔見せられたら、また期待してしまう。
黒澤くんも、楽しみにしてくれていたら良いな、とか。
クリスマス会に来るということは、彼女が居ないのでは、とか。


帰り道、街を歩く足取りは軽い。
1ヶ月前はあんなにクリスマスが憂鬱だったのに。
すっかりクリスマス一色となった街並みを眺め、小さく息を吐き出すと白く広がった。

……まぁ、そんなに喜ぶような状況でもないけど。
別に付き合ってないし、ふたりきりで過ごすわけでもないし、友達に戻っただけなんだけど。

キラキラ輝いている駅前の店先が目に止まった。
いつもは素通りしていたけれど、今日は可愛らしく装飾されたディスプレイに、心が踊った。

眺めていると、脳内で画策が描かれた。

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