例えば危ない橋だったとして

「……それで、贈る物は決まったの?」

お母さんは小さく頷き、それには返事せずに質問を投げ掛けて来た。

「どれもこれもピンと来なくて……消え物か身に付ける物かすら」
「恋人へのプレゼントより難しいわよね~重いと思われても嫌だし」

お母さんは立ったままテーブルに肘を付いてマウスを動かした。

「そうだ、お酒は? 飲む人?」
「お酒か……」

お母さんの提案に、飲みに行った際の記憶を辿る。
黒澤くんはビールも好きだが、よくハイボールを飲んでいる。
ウイスキーか……ちょっとお洒落で、色気もあるかも知れない。
でも、クリスマス会に持って行くには嵩張るかな?


わたしはプレゼントをウイスキーと靴下に絞った後、散々悩んだ末、翌日の連休初日にウイスキーを買いに出掛けた。
そして店でも散々悩み、店員のおすすめの中で2000円台の比較的無難な価格のウイスキーを包んで貰った。

久しぶりに服も見にお店を回った。
様々なデザインのニットやスカート、コートに、可愛いと心ときめかせていると、落ち込んでいようが浮き立って来るので不思議だ。
考えてみれば、黒澤くんに仕事仕様ではない本当の私服を披露するのは、やはりいつかの同期会でのバーベキュー以来である。
俄然気分が高ぶって来た。

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