例えば危ない橋だったとして
苦行の様なクリスマス会も締め括られ、解散となった。
笑顔を作る辛さは幾ばくか和らいでいたが、一刻も早くひとりになりたくて、用事があると嘘をつき集団から離れた。
街中にはまだ開いている店もあり、怪しまれてはいないはずだ。
同期と遭遇しない様、注意を払いながら電車に乗り込んだ。
しかし、何故こんなにも落ち込んでしまったのか、我ながらよくわからなかった。
黒澤くんの元カノが綺麗な子であることくらい、想像の範疇のはずだ。
クリスマスなのだから、黒澤くんが女の子と会う為に突然参加をやめたとしても、不思議ではない。
ドアの側に立ち、窓ガラスに映る自分の面構えの暗さに、益々気分が塞いだ。
そして、改めてその風貌を眺め、嘆息を吐く。
背は低く、胸はぺちゃんこで、くせ毛がもそもそと広がっている。
紛れもない、ちんちくりん……。
何がどうして、黒澤くんはこんなちんちくりんに手を出したのか……疑問は広がるばかりだ。
背中にずしりと伸し掛かる重みを感じ、涙が滲みそうだった。
リュックの中には、黒澤くんに渡すはずだった、ウイスキーの瓶が入っている。
せっかくの、おろしたての可愛い服も、彼の目に触れることはない。
自宅の最寄駅へと到着し、アスファルトを踏み出した。
夜も更け、めっきり寒くなって来たことを感じ取り、体を震わせた。