例えば危ない橋だったとして
弔いの瞬間
連休明け、黒澤くんは何事もなかったかのように出社して来ていた。
わたしは残りの休みを、時折涙を流し過ごした為、やや腫れた目元が心配だった。
人に見抜かれる程ではないだろうが、黒澤くんに察せられるのは避けたかった。
いつも通りに挨拶をし、いつも通りに仕事を始めた。
クリスマスのことは、お互いに触れなかった。
他の仲間達や、電話で人と喋ると、幾ばくか正気を取り戻せて来た。
昼頃になって、改めて黒澤くんを横目で盗み見た。
冷静になってみると、心なしか普段よりも表情が険しいような気がした。
クリスマスを異性と楽しく過ごした人には、あまり見えなかった。
わたしはクリスマス会の時も、黒澤くんがドタキャンするなんて何か理由があるに違いないと感じたはずだ。
もしかしたら、本当に何かあったのかもしれない。
頭を掠めながらも仕事を続けていると、システム上の設備登録の内容に疑問を持った。
住所は登録されているが、特記欄に『事故付きのため工事不可。確認中』と入力されている。何だこれは??
「黒澤くん、これ内容知らないかな? よくわからないんだけど」
黒澤くんがわたしから画面の打ち出しを受け取り、目を通した。
「……何だったけな、これ。見たことある。確認するわ」
彼が力なく答えたその時、昼休憩を告げる鐘が鳴り響いた。