例えば危ない橋だったとして
仕事を終え、皆で葬儀会場へ向かった。
お母さんの出身地の会場であるため、片道1時間半を要した。
到着した頃には、通夜は既に執り行われており、受付を済ませ祭壇の前に目を向けると、喪服に身を包んだ黒澤くんが、お父さん、弟さんと思われる男性と共に佇んでいた。
焼香を行う弔問客ひとりひとりに、頭を下げている。
課長と係長に続いて、わたしも焼香台へ進んだ。
黒澤くんがわたしに気付き、他の人へと同じように頭を下げた。
通夜が終了し、皆で様子を伺いつつ、課長が黒澤くんに声を掛け、共に頭を下げる。
「この度は、心よりお悔やみ申し上げます」
「お忙しい中、お越し頂きありがとうございます」
「仕事のことは気にしないように、皆で力を合わせてさばいてるから」
「ご迷惑お掛けします」
黒澤くんのお父さんがやって来て、課長と係長に挨拶した。
その隙に黒澤くんがわたしに囁く。
「榊来てくれたんだ、ありがとう」
わたしは何と言葉を掛ければ良いのかわからず、微かに笑みを浮かべた。