例えば危ない橋だったとして
「榊が言ってくれたこと嬉しかった。全部」
その優しい表情と言葉だけで、胸がいっぱいで目頭が熱くなって来た。
そう言って貰えるだけでも、充分だと思った。
「榊が真っ直ぐ、俺にぶつかってきてくれたから……俺もぶつからないとって思って」
緊張で顔を強ばらせ、黒澤くんの次の言葉を待つ。
駅へ繋がる橋に差し掛かった所で、黒澤くんが足を止めた。
「前に……『自分を支えられるようになる』とか言ってたけど……『ひとりで抱えないで』とも言ったよな。榊が」
立ち止まり黒澤くんの言葉を耳に入れながら、目を見開く。
一昨日の出来事が、脳内に鮮明に蘇る。
「一緒に支え合うっていうのじゃ、駄目? 榊の抱えてる痛みを、俺に分けてよ」
真剣な眼差しと台詞に、言葉を失ったと同時に、目に涙が浮かんだ。
瞬間、頭の中を駆け巡った。
淳から受け取った『その痛みは引き受けない』というメッセージ。
それが悲しかったんだ。ずっとずっと。
「不安とか、思ってることとか、気になることは全部言って。全部、答えるから。俺の彼女になって下さい。好きだよ」