例えば危ない橋だったとして
憂える過去とゆらめく今

大学生の頃から付き合っていた彼氏が、わたしがまともに付き合った初めての人だった。
それまでにも彼氏がいたことはあったけれど、いずれも半年も経たない内に破局してしまった。

唯一のまともな彼氏とは、2年生の時、学園祭実行委員会で出会った。
一緒にお化け屋敷の研究をして、メイクや衣装について意見を出し合った時間は掛け替えのないものとなり、共有した輝いた気持ちは、次第に恋心へと形を変えた。

委員の活動も終盤の頃には、講義のない時間を食堂や図書館で一緒に過ごしたり、時には大学の外へ食事に行ったりと、親密さを増して行った。
そして3年生の夏休みに入る前、彼から告白されて交際がスタートした。

大学でも学外でも、暇さえあれば時間を共にし、カップルらしくイベント毎にプレゼントの交換をしたり、甘く煌めいた日々を過ごした。
彼の屈託のない笑顔や、飾らない言動が好きだった。

しかし、初めは順調に思えたわたし達のお付き合いは、就活が本格化して行くにつれ、すれ違いも増えて行った。
喧嘩などしたことがなかったのに、些細なことで言い合いになったり、会えない日々も続いた。

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